「退去費用、10万3000円をお支払いください」
1年10か月暮らした賃貸を退去して20日後、突然届いた請求書を見て、私は言葉を失った。
退去立ち会いの日、担当者からは「翌週、見積もりを送ります」と言われていた。私も「内容を確認してから対応します」と答えている。
ところが、見積書は届かないまま、いきなり請求書だけが送られてきた。
記載されていたのは「原状回復工事9万3637円」と消費税。備考欄には「詳細は別紙参照」とあるのに、肝心の別紙は入っていなかった。
子どもがいたため、壁の一部に薄い黒ずみがあったことは認める。
契約書には退去時のクリーニング費用を借主が負担する特約もあった。
しかし、なぜ壁一面を張り替えるのか。
何平方メートル施工したのか。
黒ずみ以外のどこに損傷があったのか。
請求書からは何一つ分からなかった。
管理会社へ電話すると、担当者は面倒そうに言った。
「お子さんがいたなら、壁は汚れますよね。もう工事も終わっていますので」
私は声を荒らげず、
「支払いを拒否しているのではありません。写真、施工範囲、単価、クリーニング費用を分けた明細を送ってください」
と伝えた。
さらに、退去立ち会い直前に撮影した室内写真と動画、担当者とのやり取りを保存した。
写真には、指摘された黒ずみ以外の壁が破れたり落書きされたりしていない様子が、日付入りで残っていた。
国民生活センターの案内を確認すると、通常損耗や経年変化は原則として借主負担ではなく、納得できない請求には明細の説明を求めるよう示されている。
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