59歳の誕生日、郵便受けに「ねんきん定期便」が届いた。
封を開けた私は、2つの数字を見比べて言葉を失った。
これまで納めた保険料の累計額は、1015万6080円。
一方、65歳から受け取る年金見込額は約170万円。
「1000万円以上払って、戻るのは170万円だけか」
腹が立ち、私はその写真を息子へ送った。
すると息子から、すぐに電話がかかってきた。
「父さん、その170万円は総額じゃなくて年額だよ」
確かに欄には「年額」と書かれている。
月に直せば約14万1600円。
それでも、家賃や光熱費、税金、保険料を考えれば、余裕のある老後とは言えない。
私は定期便、昔の給与明細、雇用保険の書類を持って年金事務所へ向かった。
窓口で、
「これだけ払ったのに、なぜこの金額なのですか」
と尋ねると、担当者は1枚ずつ記録を確認した。
定期便に記載された厚生年金保険料の累計額は、原則として本人負担分で、会社も別に同額を負担しているという。
また、公的年金は自分の積立金を取り崩すだけの商品ではない。
老齢年金に加え、条件を満たせば病気やけがで生活や仕事が制限されたときの障害年金、本人が亡くなったときに家族を支える遺族年金もある。
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説明を聞いても、将来への不安が消えたわけではない。
だが、担当者が加入履歴を指で追っている途中、突然手を止めた。
「この2年2か月、記録が空白になっています」
そこは、私が30代のころに勤めていた会社の在職期間だった。
会社はすでに合併していたが、私は当時の給与明細と年金番号が記載された書類を保管していた。
正式な記録照会を申し込み、証拠書類を提出した。
約2か月後、年金事務所から訂正通知が届いた。
抜けていた26か月分が加入記録へ追加され、65歳時点の年金見込額は約170万円から約182万円へ修正された。
年12万円。
20年間受け取れば、単純計算で240万円の差になる。
私は最初に投稿した「国が認めた詐欺」という言葉を消し、代わりにこう書いた。
「金額に怒る前に、加入記録を1行ずつ確認してください。
昔の給与明細は捨てないでください」
年金制度に不満がないわけではない。
月14万円前後で老後を安心して暮らせるのかという疑問も残っている。
それでも、定期便は怒って捨てる紙ではなかった。
自分が働いた年月と、将来受け取る権利を守るための証拠だったのだ。