ここ数日、左目だけがずっと見えづらかった。
視界に薄い霧がかかったようで、何度まばたきしても消えない。痛みはなかったため、疲れ目だと思って放置していた。
その夜、洗面所の小さな鏡で左目をよく見ると、黒目の周囲に透明な円が見えた。
カラコンはつけていない。
それなのに、どう見てもコンタクトレンズの縁だった。
怖くなった私は手を洗い、目を傷つけないよう慎重に外した。
指先に乗っていたのは、透明なソフトコンタクトレンズのような物だった。
けれど、私はクリアコンタクトを買ったことがない。
家族にも聞いたが、誰も使っていなかった。
いつ、どこで入ったのか。
知らない人のレンズなら感染症は大丈夫なのか。
考えるほど怖くなり、翌朝すぐ眼科へ向かった。
受付で事情を話すと、「もう取れたなら様子を見てもよいのでは」と言われた。しかし、左目のかすみが残っていたため、私は診察をお願いした。
医師が顕微鏡で確認すると、角膜の表面に細かな傷と炎症が見つかった。
「取れたから終わりではありません。違和感や見えづらさが残るなら受診して正解です」
さらに、持参した透明なレンズと、普段使っているカラコンの箱を見せた。
医師が形や大きさを確認した結果、それは誰かのクリアコンタクトではなく、私が数日前に外したつもりになっていたカラコンの破損した一部である可能性が高いという。
思い返すと、その日は帰宅が遅く、暗い洗面所で急いでレンズを外していた。色のある部分だけが取れたように見え、透明な部分が目に残っていることに気づかなかったらしい。
私は「全部外した」と思い込み、そのまま数日過ごしていたのだ。
医師から処方された点眼薬を使い、コンタクトの装用を中止した。数日後には炎症が治まり、曇っていた視界も元に戻った。
もし「取れたから大丈夫」と放置していたら、傷が悪化していたかもしれない。
それ以来、私はレンズを外すたびに形が完全か確認し、少しでも欠けていたら自分で目の奥を探さず眼科へ行くことにした。
突然出てきた、買った覚えのない透明なレンズ。
正体は外から入った謎の異物ではなく、“外したつもり”になっていた自分のレンズだった。
コンタクト使用中に見えづらさや異物感などの異常が続く場合は、自己判断せず眼科へ相談することが重要だとされています。