仕事から帰った夜、玄関のドアノブに見覚えのない紙が貼られていた。
何気なく手に取った私は、そこに書かれた文字を見て固まった。
「毎日料理うるさい!臭い!いい加減にしろ!」
かなり強い筆圧だった。
最初は部屋を間違えているのかと思った。
私は1人暮らしで、帰宅はだいたい19時過ぎ。
料理をしても簡単な炒め物か、電子レンジで温める程度だ。
友人を呼んで騒ぐこともない。
テレビもイヤホンで見ることが多い。
それなのに「毎日うるさい」とまで書かれている。
しかも、差出人の名前はない。
正直、気味が悪かった。
隣の部屋には1人暮らしらしい男性が住んでいる。
普段ほとんど顔を合わせないが、廊下ですれ違っても挨拶を返さないことが多かった。
ただ、証拠もなく隣人だと決めつけるのは危険だ。
私はメモを捨てず、まず写真を撮った。
貼られていた場所と時刻もスマホに残した。
そして翌日から、帰宅時間と料理をした時間を簡単にメモすることにした。
1日目。
帰宅19時18分。
夕食はコンビニのおにぎりと味噌汁。
火は使っていない。
2日目。
帰宅20時03分。
入浴後、冷凍パスタを電子レンジで温めただけ。
3日目。
残業で22時近くに帰宅。
その日は何も食べずに寝た。
ところが翌朝。
また玄関に紙が貼られていた。
「昨日もうるさかった」
私は、その一文を見て逆に冷静になった。
昨日は22時まで家にいなかった。
つまり少なくとも、相手が言っている「音」の発生源が私だとは限らない。
私は2枚のメモと、3日分の帰宅記録を持って管理会社へ相談した。
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