70歳を迎えて、まさかこんなに嬉しい制度があるとは知らなかった。
「もう年だから、出かける機会も減ったし……」
最初はそう思っていた。
でも、ある日区から届いた案内を見て、思わず二度見した。
そこに書かれていたのは「東京都シルバーパス」。
満70歳以上で東京都に住んでいる人が購入できる交通パスだった。
対象になると、都営バスや都営地下鉄などが利用できる。
しかも今回、区の補助制度を使えば通常12,000円の費用から10,000円が戻ってくる。
つまり実質負担は2,000円。
「本当にそんな金額でいいの?」
最初は半信半疑だった。
交通費というのは、年齢を重ねるほど意外と負担になる。
病院へ行く日。
買い物へ出かける日。
友人と久しぶりに会う日。
1回1回は小さな金額でも、積み重なると大きくなる。
特に高齢になると、車を手放したり、遠出を控えたりする人も多い。
でも、移動できる自由は生活の楽しさにつながっている。
私は必要な書類を準備し、申請することにした。
窓口では年配の方も何人か並んでいた。
「これがあると助かるんですよ」
隣にいた方が話していた。
聞けば、以前は交通費を気にして外出を減らしていたそうだ。
でもシルバーパスを持ってからは、病院だけではなく、図書館や買い物にも気軽に行けるようになったという。
その言葉を聞いて、ただの交通カードではないんだと感じた。
数日後、手元に届いた東京都シルバーパス。
カードを見た瞬間、不思議と嬉しくなった。
「まだまだ自分の足で出かけられる」
そんな気持ちになったからだ。
70歳を過ぎると、できないことばかり考えてしまうこともある。
体力の変化。
生活の変化。
昔と同じようにはいかないこと。
でも、この小さなカード1枚が、もう一度外へ出るきっかけをくれた。
実際に使ってみると、バスに乗る時も地下鉄に乗る時も、以前より気持ちが軽い。
「今日は少し遠くまで行ってみようかな」
そんな気持ちが自然と湧いてくる。
もちろん制度には対象条件があり、利用できる交通機関にも決まりがある。
でも、条件に当てはまる人にとっては、とても大きな助けになる制度だと思う。
年齢を重ねることは、失うことばかりではない。
知らなかった便利な制度を知り、新しい楽しみを見つけることもできる。
今回、実質2,000円で手に入れたこの1枚。
私にとっては、ただの乗車カードではなく、
「これからも自分の時間を楽しんでいい」
そう背中を押してくれる、小さなプレゼントになった。