土曜の午後2時、買い物に来た商業施設の地下駐車場は、空きを待つ車で大混雑していた。
私も10分以上かけて場内を回り、ようやく出口へ向かおうとしたとき、目の前の光景に言葉を失った。
白い大型SUVが駐車枠に入らず、通路をふさぐように斜めに止まっていたのだ。
運転手の姿はない。
周囲にはきちんと枠内に止められた車が並び、左側の車はSUVが邪魔で出庫できなくなっていた。
後ろには数台の車が連なり、たちまちクラクションが鳴り始めた。
それでも持ち主は戻ってこない。
買い物袋を抱えた親子も、ベビーカーを押した女性も、車を避けながら狭い隙間を通っていた。
私は念のため、車の位置と時刻が分かる写真を撮り、近くの係員を呼んだ。
係員は状況を確認すると、すぐに館内放送を流した。
「白いお車でお越しのお客様、至急、地下駐車場A-2区画までお戻りください」
5分後、買い物袋を持った男性がゆっくり歩いてきた。
謝るのかと思ったが、第一声は耳を疑うものだった。
「何? ちょっと止めただけじゃん」
出られずに待っていた女性が、「もう15分以上待っています」と伝えると、男性は面倒そうに肩をすくめた。
「車が大きいんだから仕方ないでしょ。すぐ戻るつもりだったし」
私は静かに言った。
「大きい車を選んだのはあなたです。周りが我慢する理由にはなりません」
すると男性は私をにらみ、「関係ない人は黙ってて」と吐き捨てた。
だが、その直後、別の係員と警備責任者が到着した。
防犯カメラを確認したところ、男性が車を放置して館内へ入る様子と、出庫できない車が次々に詰まっていく状況が、すべて記録されていたという。
しかも放置時間は「ちょっと」ではなく、入庫記録から23分。
責任者は毅然とした口調で告げた。
「これは駐車ではなく、場内通路の妨害です。直ちに移動してください。今後同様の行為が確認された場合、当施設のご利用をお断りします」
男性は「客にそんな言い方するのか」と食い下がった。
すると、後ろで待っていた別の運転手が言った。
「みんな客です。
あなただけ特別じゃありません」
周囲からも「その通り」「まず謝るべきだ」と声が上がった。
急に形勢が変わり、男性は顔を赤くしてSUVに乗り込んだ。警備員に誘導され、そのまま駐車場の出口へ向かわされた。
車が移動すると、15分以上閉じ込められていた女性の車もようやく出ることができた。
女性は窓を開け、「写真を残して係員を呼んでくれて、ありがとうございました」と頭を下げた。
混雑しているからこそ、一人一人がルールを守らなければならない。
高級車に乗っていても、周囲への配慮まで上等になるわけではない。
空いた通路を見ながら、私はそう強く感じた。