「4歳の子が、缶チューハイを一気飲みしたみたいで……!」
夜の救急外来に、その電話が入ったのは午後9時すぎだった。
私は当直看護師として受付に向かいながら、すぐに小児科医へ連絡した。数分後、若い母親に抱えられた男の子が運ばれてきた。頬は赤く、目はうつろで、母親の服を弱くつかんでいる。
「どれくらい飲みましたか?」
医師が尋ねると、母親は目をそらした。
「たぶん、ちょっとだけです。私の飲みかけを間違えて……」
しかし、父親の態度はもっとひどかった。
「子どもって何でも口にするでしょ。そんな大げさにしなくても」
その瞬間、診察室の空気が冷えた。
4歳の子どもにとって、アルコールは“少し”でも危険だ。医師は表情を変えず、血糖、意識状態、呼吸を確認し、点滴と経過観察の準備を進めた。
その間、私は母親から缶を預かった。
缶チューハイは500ml。しかもアルコール度数9%。中身はほとんど空だった。
「本当に、飲みかけでしたか?」
私が静かに聞くと、母親は唇を噛んだ。
父親が横から言った。
「だから、子どもが勝手に飲んだって言ってるだろ」
その声に、ベッドの上の男の子がびくっと肩を震わせた。
私はその反応を見逃さなかった。
しばらくして、祖母だという女性が病院へ駆けつけてきた。受付で名前を告げるなり、泣きそうな顔で言った。
「あの子、また置きっぱなしの酒を飲まされたんですか?」
“また”。
その一言で、医師も私も動きを止めた。
祖母の話では、両親は夜になると頻繁に酒を飲み、空き缶をテーブルに置いたまま寝ることが多かったらしい。
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