美里は、亡き父から会社と自宅を受け継いでいた。
父は妻を早くに亡くした後、クリーニング会社を一人で育て、美里にも仕事を教えてきた。父の死後、美里は会社を引き継ぎ、父との思い出が残る家で結婚生活を始めた。
夫との関係そのものは悪くなかった。
問題は、姑と夫の姉、妹だった。
3人は結婚直後から美里の経済力を当てにし、「社長なんだから援助して」「お小遣いが足りない」と金を求めるようになった。
夫も自分の給料から家族へ送金していたが、強く断ることができない。
やがて姉妹は美里の会社で働き始めたものの、勤務態度やミスが問題となり、美里の負担はさらに増えていった。
そんな結婚1周年の頃。
なぜか姑たちから、夫婦2人分の温泉旅行が贈られた。
珍しく気を遣ってくれたのだと思い、美里たちは2泊3日の旅行へ出かけた。
ところが帰宅途中、姑から、「話があるから実家へ来て」と連絡が入った。
義実家には姑と姉妹が揃っていた。
そして姑は満面の笑みで言った。
「あなたたちの家は売却しました」
さらに、「これからはここで同居よ」「生活費として毎月50万円入れてもらいます」と続けた。
美里には意味が分からなかった。
あの家は父から相続した、自分名義の財産だ。
勝手に売れるはずがない。
だが姑は、所有権が移転したように見える書類を美里の目の前でひらひらさせた。
「嫁は姑に尽くすものなの」
その一言で、美里の中の何かが切れた。
「それなら離婚します」
さらに姉妹には会社を辞めてもらうと告げた。
その時、これまで母親に強く出られなかった夫も初めて声を上げた。
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