30歳のパニコは、幼なじみの夫・タイガと結婚して3年。
夫婦は1年前、タイガの仕事の都合でフランスへ移住していた。
タイガには、ほとんど連絡を取っていない継母・花江がいた。
タイガが高校生の頃、父が再婚した相手だったが、父の前では優しく振る舞う一方、タイガとは長年うまくいっていなかった。
父が亡くなってからは、ほぼ絶縁状態だった。
そんなある夜。
花江から突然、タイガへ電話がかかってきた。
「私、今あなたたちの家にいるの」
さらに、
「今日から同居することに決めたから」
「あなたたちが帰ってこないから、鍵も交換したわ」
と当然のように話し始めた。
驚く2人をよそに、花江は得意げだった。
しかも、
「荷物が多かったから整理してあげた」
「パニコさんの私物はほとんど捨てたわ」
という。
パニコは一瞬、意味が分からなかった。
なぜなら夫婦は、フランスへ移住する前に日本の家をすでに売却していたからだ。
「お義母さん、今どこにいるんですか?」
住所を聞いて確認してから、パニコは伝えた。
「私たち、1年前からフランスに住んでいます」
花江の声が止まった。
「じゃあ……この家は誰の家なの?」
夫婦が以前住んでいた家は、中古住宅として売却済みだった。
つまり花江が勝手に鍵を交換し、荷物を処分したその家は、すでにまったく別の人の所有物になっていたのだ。
しかも新しい所有者は、仕事が忙しく、引っ越し後の荷物をまだ十分整理できていなかった。
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