私は美香。
夫の徹と結婚して10年。
娘の雪と3人で、穏やかに暮らしていた。
そんな私には、
ずっと大切に守っている着物がある。
10年前に亡くなった母の形見だった。
母は裁縫が好きで、
一人娘だった私のために、七五三や卒業式の着物を仕立ててくれた。
特に七五三の着物には、
生地から小物まで母のこだわりが詰まっていた。
今年、その着物を雪が着た。
「おばあちゃんが作ったの?」
「そうだよ。ママが七五三の時に着たの」
「私が着てもいいの?」
「もちろん」
着物姿の雪を見た時、
胸がいっぱいになった。
母が生きていたら、
どれだけ喜んでくれただろう。
写真を義母にも送った。
すると後日、電話がかかってきた。
「その着物、愛にも貸してあげて」
愛ちゃんは、夫の兄・健吾の娘。
雪と同じくらいの年齢だった。
私は申し訳ないと思いながら断った。
「母の形見なので、誰かに貸すのは抵抗があるんです」
すると義母は不満そうに、
「たった1日でしょ?」
「ずいぶんケチなのね」
と言った。
夫の徹は私の味方をしてくれた。
「母さん、これは美香のお母さんの形見なんだ」
「愛の着物は兄さんたちで用意すればいいだろ」
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