私の名前は小杉ひ子。
30歳で、結婚したばかりだった。
夫の徹とは仲良く暮らしていた。
ただ、ひとつだけ気になることがあった。
それは夫の趣味だった。
夫は鉄道模型のコレクターだった。
休日になると模型を眺めたり、細かな部分を確認したりしていた。
「これは昔の車両を完全に再現しているんだ」
嬉しそうに話す夫を見ると、好きなものに夢中になる気持ちは理解できた。
でも新居に引っ越してから、私は少しずつ不満を感じるようになった。
鉄道模型のために1部屋を使っている。
まだ片付いていない荷物もある。
私は思った。
「使わないものは処分した方がいいんじゃないか」
ある日、夫に提案した。
「この部屋の模型、使わないものは整理しない?」
「古いものや壊れているものもあるでしょう?」
すると夫は強く怒った。
「模型は1つ1つ考えて選んで買っている」
「必要ないものなんてない」
その時の私は、そこまで怒ることなのかと思った。
でも、夫の気持ちを深く考えようとはしなかった。
そして夫が仕事へ行った日。
私は業者を呼んだ。
部屋にある鉄道模型をすべて売却した。
「家族のものは家族のもの」
「夫婦なんだから問題ない」
そう考えていた。
売却金額は50万円だった。
私は少し驚いた。
でも同時に、
「これで部屋も片付く」
そう思っていた。
帰宅した夫は、空になった部屋を見て固まった。
「俺の模型は?」
私は答えた。
「売ったよ」
「50万円になった」
その瞬間、夫の表情が変わった。
怒っているというより、信じられないという顔だった。
「どうして勝手にそんなことをしたんだ」
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