結婚して12年。
私は夫の太郎と共働きをしながら、9歳になる娘の夏と3人で暮らしていた。
夫婦で頑張って貯めたお金で、いつかマイホームを買う。
それが私たち家族の目標だった。
「今年こそ家を買えるかもしれないね」
そう話しながら、少しずつ未来を作っているつもりだった。
そんなある日、仕事で遠方へ2日間の出張に行くことになった。
家には夫と娘が残る。
夫は家事が苦手で、特に料理はほとんどできない。
だから私は、食事のことや家のことを書いたメモを残した。
「お惣菜でもいいし、外食でもいいからね」
そして、娘との2日間の食事代として5万円を渡した。
「娘が寂しがったら、好きなものを食べさせてあげて」
そう伝えて出発した。
出張先では仕事が忙しく、私はゆっくり食事をする時間もなかった。
夜になり、やっとホテルで一息ついた時だった。
スマホが鳴った。
画面を見ると、娘からの電話だった。
「お母さん……お父さん帰ってこないよ」
時計を見ると、もう20時を過ぎていた。
「ご飯は?」
そう聞くと、娘は小さな声で答えた。
「まだ食べてない……」
頭が真っ白になった。
9歳の娘が、暗い家で1人。
しかも冷蔵庫にはすぐ食べられるものもほとんどない。
私はすぐ夫に連絡した。
でも電話には出ない。
どうすればいいのか分からない中、思い浮かんだのは隣に住む林さん夫婦だった。
事情を説明すると、林さんはすぐに言ってくれた。
「そんなの大変じゃない。うちでご飯食べればいいのよ」
その言葉を聞いた瞬間、涙が出そうになった。
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