私は28歳。
フリーランスで仕事をしながら、夫と2人で暮らしていた。
夫は32歳。
学生時代から小説家になる夢を持っていた人だった。
付き合っていた頃の夫は、夢に向かって努力する人だった。
休日には一緒に本屋へ行った。
お気に入りの本を持ってカフェを巡った。
「いつか自分の書いた本を誰かに読んでもらいたい」
そう話す夫の姿が好きだった。
だから結婚した時も思っていた。
この人が夢を叶えるまで、支えていこう。
しかし、結婚してから少しずつ変わっていった。
夫は仕事と執筆活動で忙しいことを理由に、家のことをほとんどしなくなった。
「俺は仕事と小説で忙しいんだ」
「それくらい察してくれよ」
最初は夢を追うために余裕がないのだと思った。
でも次第に、言葉はもっと酷くなった。
「夫を支えるのが妻の役目だろ」
「俺に成功してほしいなら、もっと環境を整えてくれ」
私は違和感を覚えるようになった。
私だって仕事をしている。
それなのに、夫は自分だけが頑張っているような態度だった。
決定的だったのは、叔母が亡くなった時だった。
急に実家へ帰り、葬儀の準備を手伝う必要ができた。
「1週間くらい実家に帰るね」
そう伝えると、夫は怒った。
「1週間も俺を放っておくのか?」
「飯はどうするんだ?」
その瞬間、何かが切れた。
大切な家族を失った悲しみより、
夫は自分の食事の心配をしていた。
私は呆れながらも、実家へ帰った。
そして葬儀が終わり、疲れ切った状態で家へ戻った。
しかし――
玄関の鍵が開かなかった。
鍵を差し込もうとしても入らない。
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