私は30代後半の会社員。
妻とは同年代で、
結婚生活を続けていた。
妻には熱中しているアイドルがいた。
専用の趣味部屋だけでは足りず、
CDやポスター、グッズは少しずつリビングにも増えていた。
私は特に強く文句を言わなかった。
何かをそこまで好きになれることを、
少し羨ましいとさえ思っていたからだ。
そんな私にも、
たった一つだけ大切にしている物があった。
幼い頃に亡くした父の腕時計だった。
父は生前、
「お前が成人したら、一緒に酒を飲みたいな」
と言っていた。
その願いはかなわなかった。
だから私は毎年、父の命日になると、
腕時計をテーブルに置いて晩酌した。
まるで父がそこにいるような気持ちで。
時計はもう動かない。
傷もあり、古びていた。
それでも私にとって、
値段とは関係のない物だった。
結婚前に妻の父へ見せたこともある。
時計好きの義父は、
「これはいい時計だ。大切にしなさい」
と言ってくれた。
ところが最近、妻はその時計を嫌がるようになった。
「私の推しグッズの近くに置かないで」
「そんな薄汚れた物、出しておいたら捨てるからね」
私は仕方なく、
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