父が亡くなった。
母はすでに他界していたため、
私にとって実家は、両親との思い出が残る大切な場所だった。
ところが夫・幸介は、
葬儀の直後から遺産の話ばかりした。
「お父さん、かなり財産を持ってたんだろ?」
「実家も相続したんだよな?」
悲しんでいる私に向かって、
そんなことを平然と言う。
さらに、
「親孝行できなかったのは自分のせいだろ」
とまで言われた。
私は、その場で離婚を決意した。
気持ちを整理するため、
妹・香里と父が残していた旅行券を使い、1週間ほど家を離れた。
そして帰国後。
遺品を整理するため実家へ向かうと、
私は目の前の光景を疑った。
家が壊されていた。
「何、これ……」
慌てて幸介に電話した。
すると夫は驚くどころか、
「古い家だったから、俺が手続きしておいた」
と言った。
しかも、それだけではなかった。
「土地が空くだろ?」
「そこに新しい家を建てて、母さんと住むんだよ」
私は言葉を失った。
父から受け継いだ家を、
私に相談することなく取り壊した。
そのうえ新築まで建て、
自分の母親と暮らすつもりだったのだ。
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