「うるせえ!豚汁が嫌なら、この避難所から出て行け!」
体育館中に、自治会役員の怒鳴り声が響いた。
地震発生から4日目。
避難所には214人が身を寄せていた。
その日の炊き出しは、3日連続の豚汁だった。
温かくて、野菜も取れる。
私も豚汁そのものに反対していたわけではない。
ただ、避難者名簿を確認すると、豚肉を食べられない人が18人いた。
宗教上の理由がある人。
食物アレルギーのある子ども。
脂質制限を受けている高齢者。
昨日も、一昨日も、その人たちは白いご飯と漬物だけで空腹をしのいでいた。
小学2年生の女の子は、母親に小声で聞いていた。
「今日は、私も食べられるものある?」
母親は笑顔を作りながら、
「おにぎりがあるから大丈夫だよ」
と答えた。
だが、配布されたおにぎりは1人1個。
成長期の子どもには明らかに足りなかった。
私は炊き出し会議で提案した。
「豚汁を全面的に廃止する必要はありません」
「鍋を2つに分けて、片方を野菜汁にできませんか?」
ところが自治会役員の男性は、机を強く叩いた。
「少数のわがままに付き合っていられるか!」
「無料で食わせてもらっている立場だろ!」
周囲の役員も苦笑いしながら黙っていた。
私は言い返さなかった。
代わりに、3日分の配食記録を机に置いた。
食べられずに返却された豚汁は、合計47杯。
一方、倉庫には未使用の昆布だし、豆腐、白菜、乾燥わかめが残っていた。
同じ材料費で、20人分の野菜汁を作れる計算だった。
「物資が足りないのではありません」
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