「……90万3,800円? 中華で?」
8月6日の夜、妻がテーブルに置いた領収証を見て、俺は思わず声を失った。
金額は「¥903,800-」。
但し書きには、たった一言。
「お食事代として」
店名を検索してみると、高級中華料理店らしい。
俺は確かに数日前、仕事と家事で疲れ切っていた妻に、
「たまには友達と遊んで、リフレッシュしてこいよ」
と言った。
だから夕食が少々高くなった程度なら、何も言うつもりはなかった。
だが90万円は話が違う。
「現金のみの中華ってあるのか……?」
しかも、その日は妻が珍しく、
「今日は遅くなるね」
とだけ連絡してきた日だった。
帰宅したのは23時過ぎ。
俺が、
「楽しかった?」
と聞くと、
「うん、久しぶりに笑った」
と嬉しそうに答えていた。
だからこそ余計に聞きづらい。
それでも黙っていられず、俺は領収証を妻の前に置いた。
「怒ってるわけじゃない。ただ、何を頼んだのかだけ教えてほしい」
妻は領収証を見た瞬間、
「ああ、それね」
と驚くほど冷静だった。
「90万円の中華って何食べたの?」
少し皮肉っぽく聞いてしまった。
すると妻はスマホを取り出した。
「まず、私1人の会計じゃないよ」
画面に表示されたのは、大学時代の友人たちとのグループチャット。
参加者は18人。
どうやら、恩師の退職祝いを兼ねた同窓会を妻が幹事として企画していたらしい。
個室貸切。
料理のコース。
酒。
恩師への記念品。
さらに遠方から来る恩師夫妻の宿泊代まで、妻がまとめて手配していた。
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