「バックできないなら、車なんて運転しないでください!」
地下駐車場に響いたその言葉に、私は耳を疑った。
買い物を終えて戻ると、私の車の隣に黒いホンダ車が止まっていた。
ただし、普通の止め方ではない。
前輪は大きく曲がったまま。
車体は白線を踏み越え、車の前方が私の出口へ斜めに突き出していた。
どう見ても、駐車スペースへ左側から無理やり突っ込んだような状態だった。
私の車は、前にも横にも進めない。
幸い、後ろに一台分の空きがあった。
そこを使えば、何度か切り返して出られるかもしれない。
そう考えて運転席へ向かった瞬間、一台の車が入ってきた。
その車は、私の後ろにあった最後の空きスペースへ駐車した。
唯一の逃げ道が消えた。
私は車の位置が分かるように写真を撮った。
車体。
白線。
前輪。
ナンバー。
そして撮影時刻。
その後、駐車場の管理室へ連絡し、館内放送で車の持ち主を呼び出してもらった。
一度目の放送では誰も来ない。
二度目の放送から約十分後。
買い物袋を持った女性が、家族と一緒にゆっくり歩いてきた。
これでようやく出られる。
そう思った私が事情を説明すると、女性はまず自分の車を一周した。
傷がないことを確認した後、私のスマートフォンを見て顔をしかめた。
「どうして勝手に車を撮っているんですか?」
「私の車が出られないので、状況を記録しています。車を止め直してください」
私が白線を指さすと、女性は鼻で笑った。
「ちゃんと駐車場に入っていますけど?」
前輪は白線の外。
車の先端は私の進行方向を塞いでいる。
それでも女性は平然と言った。
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