「すみません、このままでは工事を始められません」
現場監督から電話がかかってきたのは、着工初日の朝8時だった。
ようやく手に入れた土地。
何度も住宅会社と打ち合わせを重ね、今日から基礎工事が始まる予定だった。
ところが建設予定地の中央に、見覚えのない白い車が停まっていた。
もちろん、所有者から許可を求められたことなど一度もない。
敷地の入口には「私有地・無断駐車禁止」と書かれた看板も立ててあった。
それでも車は、まるで自分の駐車場のように置かれていた。
現場監督は近隣の家を回り、持ち主を探してくれた。
しかし、誰も名乗り出ない。
車内の見える場所にも連絡先はなかった。
クラクションを鳴らすわけにもいかず、勝手に車を動かすこともできない。
重機も資材運搬車も敷地へ入れず、作業員たちは手を止めたままだった。
私はすぐに現場へ向かった。
そして、車の位置、ナンバー、禁止看板、時刻が分かるようにスマホで撮影した。
近所の人によると、その車は前日の夜から停まっていたらしい。
「空き地だから、少しくらい大丈夫だと思ったんじゃない?」
そう言われたが、ここは空き地ではない。
今日から家を建てる、私たちの土地だ。
現場監督は警察へ連絡した。
到着した警察官は車両を確認し、所有者への連絡を試みた。
だが電話はつながらなかった。
警察官は私たちへ、車に触れたり傷つけたりしないよう注意した。
すると現場監督は、静かに工程表を開いた。
「車を動かさなくても、できる範囲から始めます」
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