1人8万円の高級宿に泊まった翌朝、私たちの前に出てきた朝食は、白米、味噌汁、漬物、小鉢ひとつだけでした。
隣の席を見ると、焼き魚、だし巻き卵、陶板焼き、湯豆腐、果物まで並んでいます。
夫が小声で「うちだけ違わない?」と言い、私もさすがに仲居さんを呼びました。
「すみません。焼きものとか、そういうの、ウチはなかったんですけど…」
すると若い仲居さんは、こちらを一瞥して言いました。
「お客様のプランは簡易朝食ですので」
私はスマホの予約画面を開きました。
そこにははっきりと「特選会席・料理長厳選朝食付き」と書かれていました。
でも仲居さんは笑って、
「ネット予約だと勘違いされる方、多いんですよ」
と決めつけてきたのです。
1人8万円、夫婦で16万円。
記念日のために奮発して泊まった宿で、まるで安い客のように扱われ、胸の奥が冷えました。
その時、隣の席の年配夫婦が困った顔でこちらを見ました。
「実は私たち、頼んでない料理まで来ているんです。朝から多すぎると思っていて…」
その一言で、空気が変わりました。
私は黙って周囲の膳を見比べ、写真を撮り、予約画面と一緒にフロントへ行きました。
最初に出てきた男性スタッフも、
「厨房の手違いかと」
と軽く済ませようとしました。
しかし私が「では、支配人さんをお願いします」と言うと、奥から年配の支配人が現れました。
支配人は予約番号を確認した瞬間、顔色を変えました。
さらに配膳表を見て、深く頭を下げました。
「大変申し訳ございません。お客様のお料理が、別のお席に出されています」
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