「この株と、お母さんの遺産10億円は、長女である妻が相続するんで」
義兄の高田忠義がそう言った瞬間、部屋の空気が凍りついた。
母の四十九日を迎える前の、静かな仏間だった。
母の遺骨を前に、親族が集まり、これから遺言について確認する大切な場だった。そんな場所で、まるで自分が勝者になったかのような笑みを浮かべながら、忠義は言い放ったのだ。
「長女には当然、相続する権利があるだろ? しかも10億だぞ。母親だって喜んでくれるに決まってる」
俺は耳を疑った。
俺の名前は天中渡。50代後半になり、人生も後半に差し掛かった頃だった。
妻とのんびり過ごす休日が増え、娘たちも成長して、家族との穏やかな時間を大切にしていた。
そんなある日の午後、テラスで妻とコーヒーを飲んでいた時、一本の電話が鳴った。
妻が電話に出た瞬間、表情が変わった。
声が震えている。
嫌な予感がした。
電話を切った妻は、しばらく黙った後、小さな声で言った。
「お母さん……亡くなったって」
覚悟はしていた。
母は半年ほど前から入院していて、医師からも何度も覚悟を求められていた。
それでも、いざその時が来ると胸が締め付けられた。
母は父を早く亡くし、女手一つで俺と姉を育ててくれた。
幼い頃、学校で嫌なことがあって泣きながら帰ると、母は相手の家に乗り込むほど強い人だった。
争いが苦手な俺とは正反対の性格だった。
「お前は父さんに似たんだね」
母はいつも笑ってそう言っていた。
厳しい人だった。
でも、誰よりも愛情深い人だった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=rpblKbv35-4,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]