3年ぶりに実家へ帰るバスの中だった。
私は前方の席に座り、外を眺めていた。
途中から乗ってきた50代くらいの女性が、なぜか私の目の前に立った。
後方にはまだ空席もあったが、特に気にしなかった。
しばらくして乗ってきたのが、20代くらいの女性だった。
車内はすでに混み始めていた。
ふと彼女のバッグを見ると、マタニティマークがついていた。
お腹はまだ目立っていない。
私は自分のリュックを座席へ置き、彼女のところへ行った。
「よかったら、あそこの席に座ってください」
女性は驚きながらも、
「ありがとうございます」
と笑った。
ところが、その直後だった。
「ちょっと、あんた!」
さっきから私の前に立っていた女性が大声を出した。
「私の方が年上なのに、なんで私には譲らないのよ!」
妊婦さんは困った顔をして立ち上がろうとした。
私は止めた。
「そのまま座っていて大丈夫ですよ」
すると女性はさらに怒った。
「お腹なんて出てないじゃない。妊娠してるって嘘なんじゃないの?」
私はマタニティマークを示した。
だが女性は鼻で笑った。
さらに私の顔をじっと見て、
「あら、あなた、あの家のお嬢さんでしょ」
と言い出した。
実家の近所の人だったらしい。
「いい歳して独身なんでしょ?」
「平日のこんな時間に帰ってくるなんて、ニートなの?」
私自身が何を言われるかは、もうどうでもよかった。
ただ、席を譲られた女性がどんどん小さくなっていくのが気になった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください