「昔からある道でしょ?誰が使ってもいいじゃないですか」
隣に越してきた若い夫婦は、共有私道に車を停めるたびにそう言った。
うちと隣家の間にある私道は、幅二メートルほどの細い道だ。祖父の代からずっと、両家が交互に使ってきた場所だった。
それなのに、隣家の車は朝から晩までそこに停められたままだった。買い物の荷物を運ぼうにも、台車すら通せない日が続いた。
宅配便のトラックも入れず、荷物を家の前まで手で運んでもらうことも何度かあった。
夫と二人、六十代になってからは重い荷物を運ぶだけでも一苦労だ。それでも最初のうちは、越してきたばかりだから仕方ない、そのうち慣れるだろうと思って黙っていた。
「少しの間だけです」
引っ越してきた当初、若い夫はそう言っていた。だが一週間が過ぎても、二週間が過ぎても、車は動かなかった。
注意するたびに、夫は面倒くさそうな顔をした。
「そんなに気にすることですか。道なんだから」
その言い方が、ずっと引っかかっていた。祖父の代の書類には、私道の一部が我が家の敷地として登記されていたはずだった。
私は市役所の道路課へ足を運んだ。
古い地籍図と登記簿を取り寄せると、やはり私道の一部はうちの私有地だった。隣家の敷地には含まれていない。
図面を持って隣家を訪ねた。
「これ、うちの敷地なんです」
そう告げると、若い夫婦の顔から笑みが消えた。妻の方が先に口を開いた。
「すみません……実は、車庫を新しく作る工事をしていて。業者から、しばらくここに停めていいと聞いていたんです」
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください