俺が開発した特許モーターの価値を、あの男は最後まで理解しなかった。
「半額が無理なら、他社に変えることも考えないといけなくなるかもしれませんね。下請けは、簡単に潰せますから」
取引先部長・梅野が、薄笑いを浮かべたままそう言い放った瞬間、会議室の空気が凍りついた。俺の背筋にも、冷たいものが走る。だがそれ以上に腹の底で燃え上がったのは、技術を侮られた怒りだった。
俺の名前は篠原四十歳。父の経営する精密機器製造会社で、技術者として働いている。三年前、俺は五年を費やして、ある特許モーターを完成させた。小型のボディに高出力を宿す、いわば会社の命綱とも言える技術だ。特殊な合金を独自の形状に削り出し、精密に組み込むことでしか成立しない。簡単に言えば一行で済むが、実際は失敗の連続だった。
わずかな誤差で出力が落ちる。形状を変えては削り直し、組み込んでは検証し直す。その繰り返しで、心が折れそうになった夜も一度ではない。それでも諦めなかったのは、この技術が会社の未来を変えると信じていたからだ。完成した日、父は何も言わずに俺の肩を叩いた。あのとき見せた、あれほど誇らしげな笑顔は今でも忘れられない。
そんな特許モーターに目をつけたのが、次世代産業用ロボットを開発する沢井社長だった。うちとは長い付き合いがあり、これまでも精密部品を納めてきた相手だ。社長同士、父と沢井氏は気が合うらしく、今回も「うちの専属で使わせてほしい」と、丁重に申し入れてきた。
契約は複数台分の供給と長期保守を含み、総額はおよそ三百六十億。会社にとっても大仕事であり、社員たちも皆、この話を前向きに受け止めていた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nGOUVxDhMFk,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]