私は加藤幸恵、七十四歳。夫を三年前に亡くしてからは、残してくれた財産と年金のおかげで、穏やかで自由な一人暮らしを続けていた。
毎朝、近所の喫茶店へ行き、顔なじみの人たちと他愛ない会話を楽しむ。帰宅した後は散歩をし、脳トレをしたり、趣味の囲碁を楽しんだりする。それが私にとって何より大切な日課だった。
年齢を重ねたからこそ、私は分かっている。
人は動かなくなれば、心も体も少しずつ衰えてしまう。だからこそ、自分でできることは自分で続けたいと思っていた。
そんなある日、五年前に結婚して家を出ていた一人息子のコウタが、妻の里美さんを連れて突然訪ねてきた。
「母さん、俺たちと一緒に暮らさないか?」
その言葉を聞いた瞬間、私は胸が熱くなった。
昔のコウタは、自分のことばかりを優先する子だった。親である私を気遣うことも少なく、何度も寂しい思いをしてきた。
それでも私は、心の豊かな人間になってほしいと願い、子供の頃から美術館や演劇、映画など、さまざまな経験をさせてきた。
そんな息子が、今になって私を心配してくれている。
「嫌なわけないじゃない。
あなたたちに迷惑じゃないの?」
そう聞くと、コウタは安心したように笑った。
「大丈夫だよ。ここからでも仕事には通えるし、昔だってこの家から通勤していたじゃないか」
里美さんも優しい笑顔で言った。
「お母さん、これからは私が家事をしますから。無理せずゆっくりしてくださいね」
私は嬉しかった。
けれど、同時に少し違和感も覚えていた。
私はまだ、自分の人生を楽しみたい。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=8KRuezNAix4,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]