朝7時40分。
いつもの道を車で抜けようとした私は、角を曲がった瞬間にブレーキを踏んだ。
目の前に黒い車が止まっていた。
そこは住宅街の細い道路。
右側には塀。
左側には住宅の門。
しかも少し先には「止まれ」の標識がある。
どう見ても、車1台が通れる幅は残っていなかった。
「……通れない」
私はクラクションを鳴らすこともせず、数十秒待った。
しかし運転手は現れない。
フロントガラスにも連絡先らしきものはない。
仕方なくバックし、200メートルほど戻って別の道へ回った。
そのせいで普段なら5分の場所まで、15分以上かかった。
腹は立った。
でも、朝から知らない人と揉める気にもなれなかった。
ところがその日の夕方、同じ道を通ると――。
また同じ車が止まっていた。
近所のおばあさんが自転車を押しながら困っていた。
「朝から何回もここに止まってるのよ」
さらに近くの家の男性も出てきた。
「宅配の車も入れなかった。さっきは介護の送迎車まで引き返したよ」
さすがに放っておけない。
私はスマホで道路全体が分かるように写真を撮った。
時刻も残した。
すると10分ほどして、近くの家から30代くらいの男性がゆっくり歩いてきた。
車の持ち主だった。
近所の男性が、
「ここに止めると通れませんよ」
と注意すると、彼は面倒そうな顔で言った。
「5分くらいならいいでしょ」
私は思わず時計を見た。
朝7時40分にもあった。
そして今は17時過ぎ。
「朝も止まっていましたよね?」
私が静かに聞くと、男は眉をひそめた。
「だから何ですか?俺の車でしょ?」
さらに、
「みんな遠回りすればいいじゃん」
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