ある朝、団地の掲示板に貼られた1枚の紙を見て、私は足が止まりました。
そこには、手書きでこう書かれていました。
「当団地において、巨大な人の顔のようなものがたびたび目撃されています」
最初は誰かのいたずらだと思いました。
でも、続きを読んだ瞬間、背筋が冷たくなりました。
「目撃しても決して近づかず、身の安全を最優先に行動してください」
さらに、
「警察などへの通報は差し控えてください」
という文字。
普通なら「何か見たら警察へ」と書くはずなのに、なぜ“差し控えて”なのか。
その違和感が、余計に怖さを感じさせました。
私はこの団地に住んで10年以上になります。
高齢者から子どもまで暮らす、どこにでもある普通の住宅街。
夜でも人の声が聞こえるような、安心できる場所でした。
しかし、最近になって妙な話を耳にするようになりました。
「夜の階段で、大きな影を見た」
「窓の外に何かが動いた気がした」
「遠くから誰かに見られている感じがした」
最初は皆、気のせいだと思っていました。
疲れていたから。
暗かったから。
見間違いだろう、と。
しかし、複数の住民が同じような話をし始めたのです。
ある日の夜、ゴミ出しから戻った私は、建物の裏側で妙なものを見ました。
街灯の下。
壁の近くに、大きな黒い影のようなものが映っていたのです。
一瞬、人の顔のようにも見えました。
心臓が跳ね上がりました。
でも、掲示板の注意書きを思い出し、近づくことはしませんでした。
翌日、管理事務所に確認すると、担当者は真剣な表情で話し始めました。
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