「うちのカレー、なんでこんなに普通なの?」
10歳の息子が夕食のカレーを前に、突然そんなことを言った。
母親の私は、一瞬スプーンを持つ手が止まった。
「普通って何よ。いつもおいしいって食べてるじゃない」
すると息子は少し申し訳なさそうな顔をしながら、数日前に友達の家で食べたカレーの話を始めた。
その日は友達の優子ちゃんの家へ遊びに行き、夕方になったのでそのまま夕飯をごちそうになったらしい。
出てきたのはカレーライス。
ところが一口食べた瞬間、息子は驚いた。
「えっ、何これ。めちゃくちゃおいしい!」
いつも家で食べているカレーとは、明らかに味が違ったという。
コクがあって、少し甘くて、でも後からスパイスの香りがする。
息子は夢中になって食べ、ついには優子ちゃんのお母さんに聞いてしまった。
「これって、何か特別なカレーなんですか?」
すると返ってきた答えは、意外なものだった。
「普通のルーよ。でもね、違うメーカーのルーを何種類か混ぜてるの」
息子にとっては衝撃だったらしい。
カレーとは、箱から出した1種類のルーだけで作るものだと思っていたからだ。
家に帰ってきた息子は、さっそく私に言った。
「今度から、うちもいろんなルーを混ぜようよ!」
しかし私は、即答した。
「そんなの邪道でしょ。カレーは普通に作るのが一番!」
息子は納得しなかった。
「でも、優子ちゃんの家のほうがおいしかったよ」
その一言が、地味に刺さった。
母親としては毎回ちゃんと作っている。
玉ねぎも炒めているし、肉も野菜もケチっていない。
なのに、息子の中では“友達の家のカレー”が完全勝利。
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