「16歳にもなって、
一人で買い物もできないのかよ」
その言葉が聞こえた瞬間、
私は車のドアに手をかけた。
今すぐ店へ入り、
息子を守りたかった。
けれど私は歯を食いしばり、
その手を離した。
軽度の知的障害がある息子は、
一人で外出することが苦手だ。
知らない人との会話。
突然聞かれる質問。
予定とは違う出来事。
私たちには何でもないことが、
息子には大きな壁になる。
それでも息子は16歳になり、
「一人で買い物してみたい」
と自分から言った。
買うのは、
コンビニのパン一つだけ。
私は駐車場の車内で待つ。
本当にそれだけの挑戦だった。
だが、その日のために、
私たちは数か月練習した。
「お金を店員さんに渡す」
「お釣りを忘れずにもらう」
「袋は大丈夫です、と伝える」
毎日、何度も繰り返した。
息子は間違えるたびに、
悔しそうに下を向いた。
それでも翌日になると、
「もう一回やる」
と言って練習を始めた。
そして当日。
息子は店の前で何度も深呼吸し、
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