中学校から突然、電話が鳴った。
「娘さんの指に画鋲が刺さってしまって……」
その一言を聞いた瞬間、血の気が引いた。
次女が通う中学校へ急いで向かうと、先生の隣で娘が不安そうな顔をして座っていた。
「大丈夫?痛いよね?」
声をかけながら指を見ると、私は言葉を失った。
「……え?これ、画鋲なの?」
最初は小さなケガだと思っていた。
紙を留める普通の画鋲。
まさか、こんな状態になっているなんて想像もしていなかった。
無理に抜こうとすれば、さらに傷つくかもしれない。
娘も痛みをこらえながら、じっと我慢していた。
すぐに病院へ向かうことにした。
診察室で先生に状況を説明すると、まずレントゲン撮影をすることになった。
「どの方向から刺さっているか確認しましょう」
画面に映し出された指の画像を見た瞬間、先生の表情が変わった。
普通なら外側から抜くだけに見えるものでも、内部では思わぬ方向に入り込んでいることがある。
だからこそ、慎重に確認する必要があった。
私は横で娘の手を握りながら、ただ祈るしかなかった。
「痛い?」
「大丈夫……」
小さな声で答える娘を見て、胸が締め付けられた。
そして先生は、レントゲンを確認しながら慎重に処置を開始した。
少しずつ、少しずつ。
時間をかけて無事に除去してくれた。
娘の指から画鋲が外れた瞬間、家族全員がほっとした。
幸い大きな問題もなく、その後は経過を見ることになった。
でも、最後に先生が言った一言が忘れられない。
「この状態は……初めて見ました」
医師でも驚くほど、珍しい刺さり方だったらしい。
帰宅後、娘はいつものように学校の話をしてくれた。
でも私は改めて思った。
学校からの突然の電話。
たった数秒で、親の心臓は止まりそうになる。
「画鋲くらい」と思うような小さなものでも、刺さる方向や場所によっては大きなケガになる。
今回、先生がすぐに連絡をくれて、病院でレントゲン確認をしてもらえたこと。
そして何より、娘が怖い中でも頑張ってくれたこと。
当たり前の日常が、どれだけありがたいものなのかを感じた出来事だった。
今では娘も笑って話せるようになった。
「あの時のお母さん、顔真っ青だったよ」
そう言われて、私も苦笑いした。
でも、あの日レントゲンに映った小さな異物の姿は、今でも鮮明に覚えている。