「……え?これ、誰がやったの?」
家族でゆっくり過ごしていた朝。
いつものようにコメダ珈琲でモーニングを楽しんでいた。
温かいコーヒー。
焼きたてのトースト。
久しぶりに家族全員で笑える時間だった。
まさか、その数十分後に車を見て言葉を失うとは思わなかった。
店を出て駐車場へ向かった瞬間だった。
愛車の横側に、見覚えのない傷が伸びていた。
「……嘘でしょ」
近づいて確認すると、左側のフェンダーからリアバンパー付近まで傷が続いている。
光の角度を変えると、はっきり分かる。
一瞬で気持ちが沈んだ。
この車は、ただの移動手段じゃなかった。
家族で出かけた思い出。
子どもを乗せた日。
旅行へ行った日。
大切に洗車してきた時間。
全部詰まった車だった。
「誰かがぶつけたのか?」
最初は事故も考えた。
でも傷の位置を見ると、不自然だった。
駐車中に付けられたような跡。
偶然とは思えない長さ。
そして周囲には他の車との接触跡もない。
「これ、もしかして……」
家族の空気が一気に変わった。
怒りより先に出たのは、悲しさだった。
なぜ人の大切な物に傷をつけられるのか。
軽い気持ちだったのかもしれない。
「少しくらいなら大丈夫」
そう思ったのかもしれない。
でも、傷を付けられた側には大きな意味がある。
私は感情的に騒ぐのではなく、まず証拠を集めることにした。
駐車場の場所。
入店した時間。
車の状態。
傷の写真。
すべて記録した。
そして店舗にも相談した。
防犯カメラの確認ができる可能性があると言われた。
数時間前まで楽しい朝だった場所が、一気に調査の場所になった。
しかし、私は諦めなかった。
「軽いイタズラなら許される」
そんな空気を残したくなかった。
車の修理費だけの問題ではない。
人の物を傷つけた責任を、きちんと考えてほしかった。
その後、確認された映像には重要な手がかりが残っていた。
車の横を通った人物。
不自然な動き。
そして傷が付いた時間。
私は静かに必要な手続きを進めた。
警察への相談。
保険会社への連絡。
修理見積もりの準備。
感情で怒鳴るより、証拠で向き合うことにした。
数日後。
新たな連絡が入った。
「確認できた映像についてですが……」
その一言を聞いた瞬間、私はスマホを握り直した。
相手は、まさか自分の行動が記録されているとは思っていなかったのかもしれない。
そして、次に告げられた内容で状況は大きく変わった……。