「靴底は汚れてないんだから、
少しくらい触れてもいいだろ」
朝の混雑した電車内で、
60代くらいの男が吐き捨てた。
男はドアにもたれかかり、
片足を高く上げていた。
白いスニーカーの靴底は、
ドアにべったり押しつけられている。
しかも、電車が揺れるたびに
靴底を左右へこすっていた。
ドアには黒い泥と、
油のような跡が広がっていた。
見ているだけで不快だった。
私は我慢できず、
男に声をかけた。
「すみません。
足を下ろしてもらえませんか?」
男はゆっくり振り返り、
私をにらみつけた。
「は?」
「この電車、
お前の持ち物なのか?」
車内の空気が一瞬で凍った。
周囲の乗客も、
男の足元を見て眉をひそめていた。
しかし、誰も何も言わない。
私は落ち着いて答えた。
「公共の電車です」
「だからこそ、
故意に汚すのはやめるべきです」
すると男は鼻で笑った。
「正義マン気取りかよ」
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