息子がお金で最初の大きな失敗をしたのは、中学1年の時でした。
妻のクレジットカードを無断で使い、ネットで漫画やゲームを大量に購入していたのです。
幸い深刻な事態になる前に発覚しましたが、私は厳しく叱りました。
パソコンから息子のアカウントを削除。
ネット利用は禁止。
小遣いもゼロ。
親に無断で物を買うことも禁止し、その状態を1年間続けました。
「これは魔法のカードじゃない。使ったお金は、必ず誰かが払うんだ」
息子も「もう二度としない」と謝りました。
それから数年。
息子は県外の私立大学へ進学し、一人暮らしを始めました。
金銭トラブルもなく、こちらも少し安心していました。
大学2年のゴールデンウィーク。
帰省した息子が突然言いました。
「俺もクレジットカード欲しい。みんな持ってるし、俺だけないの恥ずかしいよ」
私は中学時代の一件を思い出し、最初は反対しました。
しかし息子は、
「今の俺なら自己管理できる」
と言います。
もう大学生です。
いつまでも親が管理するわけにもいきません。
数週間後、私は電話越しに学生カードの申し込みを手伝いました。
ところが、その後すぐ。
息子から慌てた電話が来ました。
「父さん、引き落とし……どうしよう」
正確な利用額は分かりませんでしたが、様子からしてかなり使っていたようでした。
息子の口座には、それまで約30万円の預金がありました。
私はカードの支払日を前に、その大半を別の口座へ移していました。
息子が本当に、自分の使った額と向き合えるのかを見るためでした。
そして言いました。
「だから、お前にはまだ早いと言っただろ」
「今回はこっちから援助しない」
「自分で使った分は、自分で働いて返しなさい」
息子はその時点で、まだアルバイトもしていませんでした。
カードは便利です。
でも、財布から現金が減らないからこそ、使った実感を失いやすい。
中学生の時には、親のカードでその失敗をしました。
大学生になった今度は、自分の名前のカードで同じことを繰り返しかけたのです。
私はもう代わりに払うつもりはありませんでした。
失敗そのものを消してやるより、自分で働き、自分で返す経験をした方がいい。
「自己管理できる」
そう言って手にした1枚のカード。
本当に必要だったのはカードではなく、その言葉に責任を持てる金銭感覚だったのです。