店の前に、10歳くらいの女の子が1人で立っていた。
夜9時を回った時間だった。
私は妻と2人で小さな定食屋を営んでいる。
20年前、事故で10歳の娘を亡くしてから、夫婦2人でこの店を続けてきた。
女の子の周りに、親らしき人の姿はなかった。
ぐう、とお腹の鳴る音がした。
「お店の近くを通ったら、いい匂いがして」
よく見ると、服はところどころほつれ、真冬なのにコートも着ていない。
手首は骨が浮くほど細かった。
「パパはいないの。ママはお仕事」
かわいそうで、放っておけなかった。
「寒いだろ、中へお入り」
「お金なんていらないよ」
女の子は戸惑いながら、店の中に足を踏み入れた。
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