「君はもう明日から来なくていい」
低く、感情のない声だった。
契約社員として2年間働いてきた天宮さやかは、営業リーダーの黒沢からそう告げられた。
「効率が悪い。無駄が多い。君のような人間はこの会社には必要ない」
握りしめた指先が、わずかに震えた。
頭に浮かんだのは、入院中の母の顔と、これからの生活費のことだった。
「お世話になりました」
深く頭を下げた彼女に、誰も何も声をかけなかった。
さやかはいつも、誰よりも早く出社し、丁寧に仕事をこなしてきた。
それでも黒沢からは「1つ1つ確認していたら時間がかかる」「遅くて丁寧なだけ。
価値がない」と繰り返し切り捨てられてきた。
それでも言い返すことはしなかった。
ここで働き続けるために、ただ「気をつけます」と頭を下げ続けた。
昼休みだけは、会社裏の小さな公園で過ごすのが習慣だった。
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