真穂は32歳、夫の両平とは結婚5年目で、待望の第一子を妊娠8ヶ月だった。マンションは独身時代に亡くなった祖母から譲り受けたもので、結婚後も名義は真穂のままだった。
妊娠5ヶ月を過ぎた頃から、義母の訪問が増えた。3度目の訪問で、義母はひとりの女性を連れてきた。
「知夏ちゃんよ。気が効く子だから、あなたの手伝いをお願いしたの」
27歳の知夏は、丁寧に頭を下げた。
台所に立った知夏は、両平が味噌汁を薄めに好むことも、大根おろしを多めにすることも知っていた。真穂が何度も失敗しながら覚えた好みだった。訪問は週に1度から3度へと増え、いつしか知夏は夕食を作るだけでなく、両平の帰宅を待って一緒に食卓を囲むようになった。義母は当然のように知夏を両平の隣に座らせ、真穂には台所に近い席を勧めた。
夫に関係を尋ねると、両平はスマートフォンから目を上げずに答えた。
「母さんが勝手に頼んだだけだ。世話をしてもらう側が疑うのは失礼だろう」
真穂は、リビングに設置していた家庭用カメラの映像を確認した。義母と知夏がベビー服を畳みながら話していた。
「出産したら真穂さんには長めに実家へ帰ってもらうわ。その間にあなたが赤ちゃんの世話をすればいいの」
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください