「俺の隣に座るのは美穂だから」
その言葉を聞いた瞬間、私は自分の耳を疑った。
今日は、私たちにとって人生で一度きりの大切な婚約式の日だった。
都内でも有名な老舗料亭。格式ある和室には美しい掛け軸が飾られ、季節の花が静かに生けられている。両家が初めて正式に顔を合わせる、未来を決める大切な食事会のはずだった。
私は約束の時間より少し早く到着し、緊張しながら彼と彼の両親を待っていた。
しかし、予定時刻を過ぎても誰も来ない。
スマートフォンで健一に連絡を入れても、電話は繋がらなかった。
十五分が過ぎた頃、ようやく襖が勢いよく開いた。
「いやあ、少し道が混んでいて遅れちゃったよ」
婚約者の健一は、まるで悪びれる様子もなく笑いながら入ってきた。
その後ろには彼の両親。そして――見知らぬ女性がいた。
「ああ、紹介するよ」
健一は当然のように言った。
「彼女は小林美穂。昔付き合っていた元カノだよ」
私は言葉を失った。
婚約式という特別な日に、なぜ元恋人を連れてくるのか。
普通ならあり得ない状況だった。
けれど、さらに信じられないことが起きた。
「美穂ちゃん、今日は来てくれて本当に嬉しいわ」
健一の母親は、私ではなく美穂の手を握って満面の笑みを浮かべていた。
「あなたは健一のことを一番理解しているものね」
その言葉に、胸の奥が冷たくなる。
私は健一の婚約者として、この場にいるはずだった。
なのに、まるで私は部外者のように扱われていた。
「ゆみさん」
義母が私を見て言った。
「美穂ちゃんにちゃんと挨拶しなさい。健一にとって、とても大切な人なのだから」
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=oL_N6ddCgQ0,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]