母が亡くなったのは、私がまだ5歳の時だった。
その日を境に、私の人生は静かに、しかし大きく歪み始めた。
父は、母の葬儀が終わるとすぐに私を祖母の家へ連れて行った。
「まだ小さいから、しばらくここで暮らせ」
その言葉に抗う術もなく、私は祖母に預けられた。
父はそれからほとんど姿を見せなくなり、数年後には再婚したという噂だけが耳に入ってきた。
私は祖母の家で育ち、父とは完全に没交渉のまま時間が流れた。
誕生日の連絡もない。学校行事に父の姿もない。
“父”という存在は、いつの間にか私の中で消えていった。
気づけば20年が経っていた。
私は社会人となり、自分の生活を築いていたある日、突然一通の連絡が届いた。
「相続の件でお話があります」
送り主は、あの父の再婚相手だった。
久しぶりに聞く父の名前に、胸の奥がわずかに冷たくなる。
会ってみると、再婚相手は丁寧な笑顔を浮かべながらも、どこか計算された空気をまとっていた。
そして開口一番、こう言った。
「相続放棄していただけますか?」
あまりにも当然のような口調だった。
私は一瞬だけ黙り、すぐに答えた。
「いいですよ」
再婚相手はほっとしたように微笑んだ。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=b1e1Auip9jo,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]