「お母さんたち、もう住んでるわよ」
完成したばかりの新築について、姑からそう聞かされた時、私は一瞬意味が分かりませんでした。あの家は、足の悪い母と父を迎えて一緒に暮らすため、私と両親が費用を出して建てた二世帯住宅です。夫の康太は資金を出していないどころか、打ち合わせにもほとんど関わっていませんでした。
それなのに完成直前になって、康太は急に「俺の親も住む」「一階はうちの母さんたちに使わせる」と言い出したのです。
私は何度も、この家は私の親との同居のためだと説明しました。けれど康太は話を聞かず、「お前は俺の嫁だろ」「住ませないなら離婚」といつものように脅してきました。
実は私は、その時点でもう限界でした。康太は以前から、自分の思い通りにならないと離婚届を突きつけてくる人だったのです。私はその態度に愛想が尽き、脅しのために用意された離婚届を本当に提出していました。受理されてから、すでに1か月が過ぎていました。
そんなことも知らないまま、康太は義両親を入居日前の新居へ勝手に住まわせていたのです。私はすぐ電話をかけましたが、返ってきたのは「俺はこの家の主人だ」「嫁が口を出すな」という言葉ばかり。
そこで私ははっきり告げました。
「もう他人なんだから、勝手に入ったら不法侵入だよ」
ようやく康太は事態を理解しましたが、時すでに遅しでした。居座ろうとしたため、結局は警察沙汰になり、義両親も退去することになりました。事情を知った義両親は呆れ、売却予定だった自宅を買い戻して戻ることにしたそうです。さらに、私が以前貸していたお金の返済も康太が責任を取るよう求められました。
家も親の信頼も失い、借金まで背負った康太とは対照的に、私はようやく両親と新しい家で落ち着いて暮らせるようになりました。
家族のために建てた家を、自分の見栄や親孝行の道具にしていいはずがありません。大事なのは「誰の親か」ではなく、誰が何のために積み上げてきた場所なのか――私はあの新居で、ようやくそれを守り切ることができたのです。