「明日なんだけど、みんなで行っていい? 夕飯だけでいいから」
金曜の午後、72歳の高橋ふみ子さんに娘・裕子さんからLINEが届きました。
ふみ子さんは少し迷ったあと、
「いいわよ。待ってるね」
と返しました。
孫の顔を見られるのは嬉しい。
フルタイムで働き、育児に追われる娘を少しでも休ませてあげたい。
そんな気持ちがあったからです。
けれど「夕飯だけ」は、ふみ子さんにとって夕飯だけではありませんでした。
鶏肉の大きなパック、牛乳、ジュース、翌朝のパン。
レジで告げられた金額は8400円。
家に来れば5人分の料理を作り、こぼした飲み物を拭き、孫たちの相手をして、最後には大量の皿を洗います。
娘夫婦が疲れていることも分かっていました。
だからふみ子さんは、
「座ってて。私がやるから」
といつも自分から動いてしまいます。
ところが、その週末。
娘が何気なく言いました。
「今月、電気代が高くて大変なの。やっぱり週末はこっちに来ていい? ここなら涼しいし、ご飯もあるし」
悪気のない言葉でした。
でも、ふみ子さんの手が止まりました。
この家の電気代だって上がっています。
食費も増えています。
夫を亡くした今、頼れるのは遺族年金と限られた貯金。
孫に会いたくて、自分の薬や化粧品を後回しにしていました。
その夜、みんなが帰った静かな部屋で家計簿を開くと、今月の赤字は3万円を超えていました。
しかも来月には白内障の検査があります。
その時、初めて怖くなりました。
もし自分が倒れたら。
老後のお金まで使い切ってしまったら。
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