「タイヤが曲がった。車、動かせない」
朝8時すぎ、職場に着いた夫から突然電話がかかってきた。
送られてきた写真を見て、私は息をのんだ。
黒い軽自動車の左前輪が、車体から外れそうなほど不自然な方向を向いていた。
「これ、いつからおかしかったの?」
私が聞くと、夫は少し黙った後、小さな声で答えた。
「数日前から、ハンドルを切るとカタカタ音がしてた」
「それ、完全に前兆じゃない!」
思わず声が大きくなった。
さらに話を聞くと、真っすぐ走っているのにハンドルが少し左へ取られたり、段差を越えるたびに前輪付近から金属音がしたりしていたらしい。
それでも夫は、「古い車だから仕方ない」と思い、そのまま通勤を続けていた。
幸い、異変が起きたのは職場の駐車場だった。
速度を落として駐車スペースに入ろうとした瞬間、「ガキン!」という大きな音が鳴り、車体が左に沈んだという。
もしこれが交通量の多い道路や高速道路だったら……。
想像しただけで背筋が冷たくなった。
私は夫に絶対に車を動かさないよう伝え、ロードサービスを手配した。
ところが、夫の同僚の一人が曲がったタイヤを見ながら言った。
「少しくらいなら走れるんじゃない?近くの整備工場まで行けば?」
夫も一瞬、その言葉に迷ったらしい。
私は電話越しにきっぱり止めた。
「絶対に動かさないで。修理代より命のほうが大事だから」
約40分後、車は積載車で整備工場へ運ばれた。
整備士が足回りを確認すると、前輪を支える部品が破損していることが分かった。
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