高速道路のパーキングエリアで、半年以上ずっと同じ場所に停まっている車があった。
黒いエスクァイア。
最初は「旅行中に置いているのかな」と思った。
でも、1週間経っても。
1ヶ月経っても。
季節が変わっても、その車は動かなかった。
周囲の車が入れ替わっていく中で、その1台だけが残っていた。
フロントガラスには日差し避け。
タイヤは動いた形跡がない。
車内は外から見る限り、荷物が置かれたまま。
ナンバーを見ると石川県の車だった。
「遠くから来た人なのかな…」
最初はそう思った。
しかし時間が経つほど、別の不安が大きくなった。
「盗難車だったら?」
「持ち主は無事なの?」
「何か事情があって戻れないのでは?」
高速道路のPAは、誰でも自由に利用できる場所ではある。
でも、長期間そのままの車を見ると、どうしても気になってしまう。
特に気になったのは、車内の様子だった。
外から見る限り、大きな異常はない。
でも、もし中で何か起きていたら?
もし家族が探していたら?
そんな考えが頭から離れなかった。
私は写真を撮り、車の特徴を記録した。
車種。
色。
ナンバー。
停まっていた場所。
「余計なことかもしれない」
そう思った。
でも、もし自分の家族の車だったら。
もし誰かが「最後に見た場所」を探していたら。
そう考えると、黙って通り過ぎることができなかった。
管理会社や関係機関に相談することにした。
数日後。
連絡を受けた担当者が車両を確認することになった。
そして調査の結果――
車の持ち主に関する情報が少しずつ確認され始めた。
長い間、誰にも気づかれなかった1台。
ただの放置車両だと思われていた車。
しかし、その裏には持ち主にしか分からない事情が隠されていた。
後日、連絡を受けた私は、担当者から渡された1枚の報告書を見て言葉を失った。
そこに書かれていた内容は、想像していたものとは全く違っていた。
そして、その車が半年以上そこにあった本当の理由が明らかになる――。