「娘さんに渡してください。よかったら食べてください」
そう言って、娘の彼氏が持ってきてくれた小さな箱。
その日、私は思いがけない訪問に少し緊張していた。
娘は習い事で家にいない。
玄関に立っていたのは、娘が最近付き合っている彼だった。
「初めまして。これ、作ったので……」
丁寧に頭を下げながら渡された袋。
中には、手作りのお菓子が入っていた。
最近の若い子は料理やお菓子作りをするんだな。
私は少し感心した。
そして、何かお返しをしなければと思った。
ちょうどその時、実家の父――娘の祖父が作ったサツマイモがたくさん届いていた。
「これなら喜んでくれるかな」
そう思った私は、袋に入れて彼に渡した。
「これ、おじいちゃんが育てたサツマイモなの。よかったら食べてね」
彼は嬉しそうに、
「ありがとうございます!」
と受け取って帰っていった。
その時の私は、まったく気づいていなかった。
まさか自分が、とんでもない勘違いをしていたことに。
数時間後。
娘が帰宅した。
「彼氏が来てくれたよ。お菓子もらったから一緒に食べよう」
そう言って、私はいただいた箱を開けた。
透明なケースの中に入っていたのは――
綺麗に並べられた焼き菓子。
見た目も香りも、どこか懐かしい。
私はじっと眺めた。
「あれ……?」
何か引っかかる。
黄色くて、ほくほくした見た目。
甘い香り。
そして形。
娘が一言。
「これ……スイートポテトじゃない?」
その瞬間、私は固まった。
「え?」
もう一度見る。
どう見てもスイートポテト。
しかも手作り。
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