朝、工事業者さんが来る時間に合わせて外へ出た私は、玄関先で固まった。
うちの敷地の前に、白い軽自動車がぴったり停まっていた。しかも前には脚立、足元には養生用の布。これでは壁の補修作業ができない。
最初は近所の人が少しだけ停めたのかと思った。けれど車内には誰もいない。ナンバーを見て、フロントガラスの表示を確認すると、どうやら近くの会社関係の車らしかった。
私は深呼吸して、まず写真を撮った。車の位置、ナンバー、うちの敷地との境目、そして公道にはみ出している部分。工事業者さんも困った顔で言った。
「これだと作業に入れませんね」
その一言で、私の中のスイッチが入った。
会社へ連絡すると、最初に出た人は「担当者に確認します」とだけ言った。謝罪も、移動の約束もない。さらに待っている間にも工事の時間はどんどん削られていく。
私は静かに伝えた。
「うちの敷地前に無断で停められていて、作業が止まっています。公道にもはみ出しているので、警察にも相談します」
その後、日野警察署に連絡すると、すぐに現場確認に来てくれた。警察官は車の状況を見て、ナンバーや場所を確認し、会社側へ連絡を取ってくれた。
しばらくして、慌てた様子の男性が走ってきた。
「すみません、少しだけのつもりで……」
私はその言葉を聞いても、声を荒らげなかった。
「少しだけでも、こちらの工事は止まっています。ここは駐車場ではありません」
男性はようやく状況を理解したのか、顔を赤くして何度も頭を下げた。会社の責任者からも電話が入り、「確認不足でした。ご迷惑をおかけしました」と正式に謝罪された。
結局、車はすぐ移動され、工事は遅れて再開。会社側は今後、近隣訪問時の駐車場所を徹底すること、同じことがあればすぐ責任者が対応することを約束した。
工事業者さんは苦笑いしながら言った。
「写真、ちゃんと撮っておいて正解でしたね」
本当にその通りだった。
勝手に停めた側にとっては「ちょっとだけ」でも、こちらにとっては大事な予定を止められる迷惑行為だ。
まして公道にはみ出しているなら、黙って我慢する必要はない。
私は最後に、移動していく車を見送りながら思った。
人の敷地は、空いている場所ではない。
一言の確認を惜しんだ結果、警察まで来る騒ぎになった。今回は写真と冷静な連絡で、きっちり対応してもらえて本当によかった。