「ハイビーム消せ 殺すぞ」
赤信号で停車した瞬間、目の前の白いミニバンのリアガラスに、真っ赤な文字が浮かび上がった。
一瞬、何が書いてあるのか理解できなかった。
仕事へ向かう途中だった私は、思わずアクセルから足を離し、二度見した。
今日はバーの出勤日。
なのに朝からなぜか全然テンションが上がらない。
接客業だから、店に入れば笑顔を作らなければならない。
「今日も全力で笑わせます!」
普段ならそう言えるのに、この日は気持ちがついてこなかった。
そんな状態で車を走らせていた時だった。
前の車が信号で止まり、その後ろについた。
すると、リアガラスいっぱいに突然あの文字が流れた。
「ハイビーム消せ」
ここまではまだ分かる。
後続車のライトが眩しい時に、注意を促す表示なのだろう。
しかし次の瞬間、
「殺すぞ」
文字が切り替わった。
「いや怖すぎるやろ……」
車内で一人、思わず声が出た。
しかも私はハイビームにしていない。
普通にライトをつけていただけだった。
「これ、私に言ってる?」
不安になってメーターを確認する。
ハイビームの青いランプは点灯していない。
間違いない。
それでも信号待ちの数十秒間、赤い文字は何度も繰り返された。
さっきまで落ちていたテンションが、別の意味で一気に目を覚ました。
少し腹も立った。
でも、ここでクラクションを鳴らしたり、車を降りたりしたところで何も良いことはない。
私は少し車間距離を広げた。
すると、隣の車線にいた車の運転手まで、その表示を見て明らかに驚いた顔をしている。
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