「おい!一緒に行くぞ!」
いつもより早い朝。
朝練がある息子は、普段なら誰より先に玄関を飛び出していくはずだった。
その日も制服に着替え、カバンを肩にかけながら時計を何度も確認していた。
「やば、もう出ないと」
私は台所から、
「忘れ物ない?」
と声をかけた。
するとちょうどその時、2階から娘が降りてきた。
珍しく、いつもより少しだけ早く支度が終わったらしい。
娘は靴下を直しながら、
「今日は余裕あるかも」
なんて呟いていた。
その姿を見た息子が、玄関で急に立ち止まった。
そして振り返るなり、
「おい!一緒に行くぞ!」
と大きな声。
娘は目を丸くした。
「えっ、いいけど駅までしか一緒じゃないよ!」
息子は靴ひもを結びながら、
「それでいいから。ほら、早く!」
まるで照れ隠しみたいに、少し乱暴な言い方だった。
娘も、
「なにそれ、偉そう」
と笑いながら傘を手に取った。
外は朝から小雨。
私は玄関のドアが閉まる直前、
「ケンカしないでよー」
と声をかけた。
すると2人そろって、
「しないし!」
返事まで同時だった。
思わず笑ってしまった。
普段の2人は、決していつも仲良しというわけではない。
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