「私は心が狭いんでしょうか」
そう思い始めたのは、隣の月極駐車場の利用者が、うちの敷地の角を当たり前のようにまたいでいくようになってからだった。
最初は1回だけだと思った。
「あ、たまたま近道したのかな」
そう自分に言い聞かせた。
うちの隣は月極駐車場。
本来の出入り口は反対側にある。
でも、フェンスの隙間のように見える場所から、うちの敷地の角を少しまたぐと、確かに近道になる。
だからなのか、何人かがそこを通るようになった。
ほんの数十センチ。
そう言われれば、それだけかもしれない。
でも毎日見ている側からすると、だんだん気になってくる。
自分の家の敷地を、知らない人が当然のように踏んでいく。
車を停める時に邪魔になるかと思って、あえて端までブロックを積まなかった場所。
そこが、いつの間にか「通ってもいい場所」みたいになっていた。
私はしばらく黙っていた。
角にポールを置こうかとも考えた。
でもスペースが狭い。
軽いものだと強風で飛ばされるかもしれない。
飛んで隣の車に当たったら、それこそ面倒になる。
重いものを置けば、自分の車を出し入れする時に当てるかもしれない。
「これくらいで気にする私が悪いのかな」
そう思っていた。
でもある日、雨上がりにその場所を見て、気持ちが変わった。
土が少し削れていた。
小さな雑草も踏まれていた。
通った跡が、はっきり残っていた。
その瞬間、
「あ、やっぱり嫌だ」
と思った。
私はまず、感情的に直接注意するのをやめた。
相手が誰か分からないし、揉めたくもない。
その代わり、写真を撮った。
敷地の境目。
フェンス。
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