リビングの片づけをしていた時、棚の奥から白い封筒が落ちてきた。
中を開けると、出てきたのは商品券の束だった。1枚1,000円。数えてみると、なんと70枚。合計70,000円分もある。
「え、なにこれ……」
最初は夫のものかと思ったが、封筒の隅に娘の字で小さく名前が書いてあった。すぐに娘へ連絡すると、電話の向こうであっさりした声が返ってきた。
「あー、それね。ママにあげてもいいよ」
その言い方に、私は思わず笑ってしまった。
「いや、あげてもいいよって、家の中に置きっぱなしだったんだけど」
「だって田舎じゃ使えるところ限られてるし。こっちだとあんまり使わないから」
娘は悪気なく言っているようだった。けれど私の頭には、別の数字が浮かんでいた。
29万円。
娘が急に引っ越すことになった日、「今日中に払わないと鍵がもらえない」と泣きついてきた。敷金、礼金、運搬費、細かい初期費用。私は慌てて通帳からお金を下ろし、娘の代わりに29万円を立て替えた。
その時、娘は言った。
「絶対返すから。毎月少しずつでも返すから」
あれから半年。返ってきたのは、最初の1万円だけだった。
私は商品券を机に並べ、写真を撮った。そして、引っ越し費用の領収書と、娘に送金した記録も一緒に並べた。
夜、娘が帰ってきた時、私はその封筒を静かに差し出した。
「これ、もらっていいって言ったよね」
娘は軽くうなずいた。
「うん。使わないし」
「じゃあ、29万円の返済分に充てるね」
その瞬間、娘の表情が止まった。
「え、そういう意味じゃ……」
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