「たった2000円で、夏のボーナスだって?」
親戚の男が、わざと大きな声で笑った。
その場には、私の息子もいた。
息子は作業所からもらった茶色い封筒を、両手で大事そうに抱えていた。
中に入っていたのは、千円札が2枚。
令和8年度の夏季賞与、2000円だった。
金額だけを見れば、決して大きくはない。
けれど息子にとっては、何か月も休まず作業所へ通い、苦手な仕事にも挑戦し続けた証だった。
息子には重い障害があり、3冊の障害者手帳を持っている。
朝は一人で準備することさえ簡単ではない。
それでも毎日決まった時間に起き、送迎車に乗り、作業所で包装や仕分け、清掃の仕事を続けてきた。
月の手取りは、400円から500円ほど。
給食費は毎月約1万円かかる。
お金だけで考えれば、確かに利益にはならない。
だが、息子が社会とつながり、自分の役割を持ち、「今日も頑張った」と胸を張れる時間は、お金では買えない。
それなのに親戚は、息子の目の前で言った。
「そんな所に通わせても赤字だろ?」
「送り迎えするだけ時間の無駄じゃないか?」
私は唇をかみ、反論をこらえた。
すると親戚は、息子が握っていた封筒に手を伸ばした。
「どうせ自分じゃ使えないだろ。俺が預かって、役に立つ物でも買ってやるよ」
その瞬間、私は男の手から封筒を取り返した。
「触らないでください」
私が低い声で言うと、親戚は鼻で笑った。
「大げさだな。たった2000円だぞ?」
そして、息子に向かって続けた。
「そんな金じゃ、まともな寿司も食べられないだろ」
息子の顔から、笑顔が消えた。
少し前まで「お寿司が食べたい」と楽しそうに話していたのに、うつむいたまま小さな声で言った。
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