夕方、玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けると、宅配便の配達員さんが、大きな段ボール箱を両手で抱えて立っていた。
しかし、いつもと少し様子が違う。
配達員さんは箱を置く前から、申し訳なさそうな顔をしていた。
「お荷物を車から下ろす時に、角を引っ掛けてしまいまして……」
そう言って見せてくれた箱には、大きな裂け目ができていた。
段ボールの表面がめくれ、片側は何重にも折れ曲がっている。
配達員さんはすぐに続けた。
「中身に問題がないか、こちらで確認していただけますか。破損していた場合は、すぐに対応いたします」
声から、本当に心配していることが伝わってきた。
きっと届けるまでの間、何度も箱を見ては不安になっていたのだろう。
私はその場で箱を開けた。
中に入っていた商品を一つずつ確認する。
幸い、緩衝材がしっかり入っていたため、傷もへこみもなかった。
動作にも問題はない。
私は配達員さんに向かって笑った。
「中身は無事ですよ。大丈夫です」
それでも配達員さんは深く頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんでした」
私は思わず、こう返した。
「箱を買ったわけじゃないですから。中身が無事なら、私は全然気にしませんよ」
その瞬間、配達員さんの張りつめていた表情が、少しだけ緩んだ。
もちろん、荷物は丁寧に扱ってもらいたい。
破損があれば、きちんと対応してもらう必要もある。
けれど、人が仕事をしている以上、どれほど気をつけていても失敗することはある。
大切なのは、失敗を隠すことではない。
正直に説明し、相手の前できちんと謝り、最後まで責任を持とうとする姿勢だと思う。
今回の配達員さんは、箱の傷を黙って置いて帰ることもできたはずだ。
それでも玄関先で事情を説明し、私が中身を確認し終えるまで待っていた。
帰り際、配達員さんはもう一度だけ頭を下げた。
「優しく対応していただき、ありがとうございます」
私はドアを閉めたあと、配送会社の問い合わせフォームを開いた。
苦情を書くためではない。
正直に報告し、丁寧に対応してくれた配達員さんへの感謝を伝えるためだった。
破れた段ボールよりも、その人の誠実さのほうが、ずっと強く心に残った。